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事業承継とM&A

M&Aの前に押さえておきたいのれん償却 

2024.02.06

M&A(Mergers and Acquisitions)実施前には、財務戦略の核心であるのれん償却の理解が不可欠です。この記事では、のれんの概念とその償却方法を明確にし、M&A成功のための財務的アプローチを解説します。

「のれん」とは?

「のれん」とは、企業が別の企業を買収する際に、その企業の純資産価値を超える金額を支払った場合の差額を指します。この差額は、買収対象企業が持つブランド力、技術力、知的財産などの計量化しづらい無形の価値や、超過収益力を反映したものです。これには販売ルートや企画・開発能力、特有のノウハウなどが含まれます。

 

株式の譲渡が行われる際、のれんは子会社の購入価格からその純資産価値を引いて計算されます。この金額は、買い手企業の連結貸借対照表に無形固定資産として記載されます。

 

買い手企業にとって、のれんはM&Aによって獲得した子会社の超過収益力を、財務諸表に明示する重要な手段です。これにより、投資家などに対して適切な情報開示が可能になります。記載されたのれんは、毎期一定額を償却する必要があります。

 

もし買収価格が対象企業の純資産価値を下回った場合、その差額は「負ののれん」となり、異なる会計処理が行われます。負ののれんは、発生した決算期に特別利益として一括して計上されます。

 

減価償却とは?

 

減価償却は、購入した資産のコストを数年にわたって分割し、それぞれの会計年度で経費として記録するプロセスです。これにより、各会計年度に費用が均等に配分されます。

 

このプロセスの主な目的は、費用を適切に分配することで、各期の利益と損失を正確に計算することにあります。減価償却費を計上することで利益が減少する一方で、実際の現金の流出が伴わないため、企業はより多くの資金を内部に留保することができる効果もあります。

 

参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

 

のれん償却とは?

 

のれん償却とは、企業がM&Aを行った際に生じるのれんの帳簿上の価値を一定期間にわたって定期的に減らしていくプロセスです。会計規則により、のれんは最長で20年の期間に渡って、毎年の「のれん償却費」として経費に計上される必要があります。この結果、M&Aによって生じたのれんの額が大きければ大きいほど、毎年の経費が増え、その結果営業利益に影響を及ぼします。

 

この事実は、M&Aを適切な価格で行うために十分な検討を必要とする理由の一つです。また、前述した通り、負ののれんの場合は一括して損益計算書(PL)に計上されるため、「負ののれん償却」というプロセスは存在しません。

 

出典:のれんの会計処理 第32項|企業会計基準委員会 財務会計基準機構

 

のれんの償却期間

のれんの償却期間は、その効果が及ぶと見込まれる期間に基づいて設定され、最長で20年間とされています。

 

実際には、投資の回収期間を考慮して償却年数を決めることが一般的です。投資回収期間とは、企業の買収に要したコストを、その企業が生成するキャッシュフローで何年で回収できるかを意味します。

 

例えば、100億円で買収した企業が年間10億円のキャッシュフローを生み出す場合、100億円を回収するのに10年かかると見積もられます。このようにして、のれんの償却期間が10年と設定されることがあります。

 

これは一つの例に過ぎませんが、会計基準ではこのような合理的な評価に基づく償却期間の設定が求められています。また、一部の企業では重要度が低いのれんに対して、一律に5年間で償却するという会計ポリシーを採用している場合もあります。

 

のれん償却方法及びのれん償却の仕訳方法

 

のれんは無形固定資産として分類され、直接控除法、定額法、または残存価額をゼロとする方法で償却されます。

 

直接控除法では、のれんの帳簿価額から償却額を差し引いた残りの金額が連結貸借対照表に記載される手法です(これは株式譲渡の場合に適用されます)。定額法では、毎期同じ額の償却費を計上し、通常は月割りで計算されます。

 

のれんの償却の際には、「のれん償却費」という特定の勘定科目が使用されます。

連結損益計算書では、「のれん償却費」としての費用が販売費及び一般管理費に計上され、連結貸借対照表の「のれん」の額は定期的に減少していきます。

 

参照:無形固定資産の表示|e-Gov 法令検索 会社計算規則 第八十一条

 

のれん償却の影響は?売り手にとってのメリット・デメリット

 

日本の会計基準を採用している企業では、のれんの償却が必須であるため、そのメリットやデメリットを議論することは難しいです。

 

前に述べたように、のれんの償却額は償却期間を通じて販売費や一般管理費として損益計算書(PL)上に計上され続けるため、営業利益に圧力をかけます。売り手にとっては、企業を高額で売却したいと考えるかもしれませんが、大きなのれん額は買い手にとって買収をためらう要因になり得ます。

 

しかし、一方でのれん償却は、万一のれんの価値が大幅に減少する場合でも、その影響を緩和する効果があります。定期的にのれんの価値を減少させることにより、突発的な大規模な特別損失の記録を避けるという利点が存在します。

 

税務上ののれんは償却されるの?

 

「のれん償却」という費用は、企業が株式を単に売買した場合、税務上の損金(経費)として認められないことがあります。買い手企業の単体貸借対照表上では、のれんの額が投資有価証券の勘定に計上されているため、連結損益計算書で費用として計上されたとしても、税金計算には大きな影響を及ぼさないのが一般的です。

 

しかし、事業譲渡や非適格合併など特定のスキームを用いる場合、税務上のれんに類似した「資産調整勘定」が発生することがあります。この資産調整勘定は5年間で均等に償却でき、その結果、課税所得を減らす効果があります。

 

したがって、売り手と買い手の双方にとって、M&Aをどのように実施するかは、税務上の影響を含めて重要な要素となります。

 

参照:自己創設営業権の時価評価について|国税庁

 

日本会計基準と国際財務報告基準(IFRS)との違い

日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)では、のれんの扱いに顕著な違いがあります。ここでは、その違いについて解説します。日本の会計基準におけるのれんの取り扱いは、主に以下の2つのポイントでまとめられます。

 

– のれんは、発生から20年以内の期間で毎期均等額を償却する。

– のれんの収益力が低下した場合、帳簿価格を減少させる減損処理が行われる。

 

一方、IFRSでは以下のような異なるアプローチが取られます。

 

– のれんの償却は行わず、一度資産計上するとそのまま維持する。

– 毎期、のれんの価値の減少を評価する減損テストを実施する必要がある。

 

IFRSでは、毎期の償却費用が発生しないため、大量ののれんがあっても営業利益への影響がないというメリットがあります。しかし、減損処理が必要になる場合、定期的な償却費用がない分、損失額が大きくなるリスクがあります。

 

さらに、毎期行われる減損テストは実務上の負担を考慮する必要があります。

 

参照:のれんの会計処理 第32項|企業会計基準委員会 財務会計基準機構

 

IFRSとは?

IFRSは、簡単に言えば、世界共通の会計基準です。この基準は「International Financial Reporting Standards」の略で、日本語では「国際財務報告基準」と呼ばれています。

 

以前は各国が独自の会計基準を採用していましたが、経済活動がグローバル化するにつれて、国際的な会計基準の導入が求められるようになりました。この需要に応えて、IASB(国際会計基準審議会)がIFRSを策定しました。

 

IFRSを採用することで、国際的に財務諸表を比較・分析することが容易になり、これは特に海外投資家にとって大きな利点です。

 

グローバルに事業を展開する企業にもメリットがあります。以前は各国の基準に基づいた財務諸表を子会社ごとに作成する必要がありましたが、IFRSを採用することで会計基準を統一し、決算業務の効率化が図れます。

 

日本では2010年からIFRSの適用が可能となりました。強制的な適用は行われていませんが、金融庁は任意での適用を奨励しており、今後の適用の進展に注意が必要です。

 

参照:④任意適用の時期|金融庁

 

IFRSではのれんは減価償却しない

 

IFRSの会計基準では、のれんの償却は行われません。発生時の金額で記録されたのれんは貸借対照表上でそのまま保持され、その価値が低下していないかを確認するための減損テストが必要とされます。

 

この減損テストでのれんの価値が大幅に減少していると判断された場合、その減少分を減損損失として特別損失に計上します。減損処理は、資産の収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなった際に、定められたルールに従って帳簿上の価額を減らす処理です。

 

ただし、減損が必要とされる場合、その損失額が大きくなることが問題視されています。これはのれんを事前に償却せず、減損テストで初めて損失が明らかになるためです。この問題を受けて、IFRSの下でのれんを定期的に償却すべきかどうかの議論が行われています。

 

IFRSを採用している企業は、将来的にこの基準が変更される可能性があるため、その点を留意することが重要です。

 

まとめ

 

通常、企業の合併や買収(M&A)を行う際、のれんが発生することが多いです。のれんは、買収金額から買収対象の企業の時価純資産を引いた差額で算出されます。

 

日本の会計基準の下では、のれんは20年以内で均等に償却することが要求されています。一方、IFRSのもとでは、のれんは償却せず、価値が大幅に減少した場合にのみ減損処理が行われます。

 

M&Aを成功させるためには、のれんの性質と扱いを十分に理解しておくことが重要です。

 

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